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カテゴリ:英語 > 冠詞

2016年1月20日にDHC出版より、猪浦道夫の新刊英語冠詞大講座が発売されました。

少し長くなりますが、この本の冒頭に書いた原稿を皆さんにご紹介して、
その内容、趣旨について知っていただければと思います。

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英語の会話や作文の学習において冠詞を正しく運用するのはほとんど
不可能のように思われています。冠詞についてはいろいろな参考書が
出版されていますが、これぞ決定的という評判の本は聞きません。
特に最近20年ぐらいの間に出版されたものは、どうも軽佻浮薄な感じ
のものが多いようです。私自身いく冊かの本を手に取ってみましたが、
どの本を読んでも、読んでいるときはフムフムとは思う
けれども(なかにはフムフムとはまるで思えないような本もありましたが)、
いざ英文を書こうする段になるとやはりわからないことが出てくるのです。

私の場合、専攻の関係でイタリア語とフランス語の冠詞の研究を先に始めて
いたのですが、英語の冠詞の論理は他の言語(伊、仏のほかにドイツ語なども
含めて)のそれに比べると、かなり風変わりで理解に苦しむことが多かったの
です。ですから、英語の専門家や英米人の著者が英語の考え方はこうなんだと
力説なさればなさるほど、結局は英語の論理と感覚を身に着けるしか解決策は
ないのか、と途方にくれたりしながら試行錯誤を繰り返しました。

結局のところ、日本人学習者が英語の冠詞をうまく使えないもっとも大きな
原因は、逆説的な言い方になるかもしれませんが、冠詞の用法ばかりを研究して
いるからではないかと思うようになりました。詳しい受験参考書で冠詞の用法の
項目を読んでみると、そのときはフムフムと思っても、実際に英語を書こうと
すると(あるいは、話そうとすると)、使おうと思っている名詞に冠詞をつけ
るべきかどうか、あるいは単数、複数のいずれにするべきか、ハタと迷うと
いう経験をおもちの方はたくさんいらっしゃるでしょう。

私がこれまでもっとも時間を割いて勉強してきた言語はフランス語とイタリ
ア語ですが、翻訳の仕事を長年してきたお陰で、結果的に英語に接してきた時
間もそれは膨大なものでした。それと、生来の好奇心からドイツ語、スペイン
語、北欧語など、西欧の言語を中心として数か国語の翻訳仕事をするように
なり、さらに大学院で言語学をかじってからは、世界の50か国語近い言語の
文法書をながめてきました。

どんな外国語を勉強するときでもいつも気になることは、英語などの「冠詞」
の機能がその言語でどう表現されているかということでした。大学院からロー
マ大学での充実した研究期間、その後ビジネスの世界で様々な言語の冠詞に
ついて比較研究する傍ら、私は何とか「英語の冠詞の参考書の決定版」の
ようなものが書けないかと思うようになり、ここ数年いろいろな角度から
ドラスティックにアプローチを変えて研究してみました。そして、私は次の
結論に至りました。

1)冠詞を正しく運用するには、冠詞の本質を理解したうえで「名詞句」全
  体の形を決める、という方法論をとらないと解決しない。

2)冠詞の本質と、各言語における実際の運用に際しての嗜好(考え方)の
  間には、恣意的なずれがあるので、冠詞の使い方に関して科学的に万能の
  法則を立てるのは不可能である。

3)英語はその特異な冠詞の使い方で、欧州の他言語とは大きな嗜好(考え
  方)の違いがある。

4)英語の冠詞は使い方に大きな「揺れ」があるので、その「揺れ」生じさ
  せる理由をよく認識すべきである。

ローマから戻ってからこれまで、私は英語の冠詞に関するセミナーを企業
の海外赴任者や一般の学習者の方々に何十回と開催してきましたが、さいわ
いご好評をいただき、参加者の方々からセミナーで話した内容を早く本にし
て欲しいというご要望をいただきました。この評価は私をおおいに力づける
ものでした。そうした経緯から、このたびDHCさんのご厚意でこの私の
長年の成果を世に出していただけることになりました。

私は冠詞をもつ10か国語以上の言語をも含めて比較、分析作業を繰り返して
きました。その点で「英語の冠詞」のアプローチの点で、これまでの参考書とは
一味違うものになっていると自負しております。

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自信作です。ぜひお手に取ってください!

小稲義男『現代英文法講座2 冠詞・形容詞・副詞』(研究社 1958)

英語学の碩学によるオーソドックスな参考書。
本サイトでご紹介した一色本の改訂版ともいえる著書だが、
詳しさ、体系的まとまりのよさではむしろ一色本のほうが
優れているかもしれない。しかし、明らかによくなっているところもあり、
本格的に学ぼうとする人にはお勧めである。
 
猪浦
の評価:8点(10点満点中) 

小泉賢吉郎『英語のなかの複数と冠詞』(The Japan Times 1989)
小著だが目のつけどころが他の冠詞参考書と異なり、まずまず面白い。ただ、
体系的網羅的とは言えなので、この本一冊で冠詞のすべての用法がわかるとか
いうことは期待できない。よいところとしては、冠詞ばかりでなく名詞の単複の
ところに目をつけていること、「揺れ」のある用例を詳しく説明していること。
ドリルはないが、実例を解説付きで示している。コスパは悪くない本です。
冠詞の好きな人は読んで後悔しないでしょう。
猪浦の評価:7(10点満点中)






 

石井隆之『冠詞マスター教本』
著者自身はなかなか優秀な人で、かつ冠詞についてかなり熱心に研究してきた跡がうかがえる。
内容の濃さでは過去20年ぐらいに出版されたものの中では
一二を争う。
少し残念なのは、やや整理が悪いので、相当じっくりかからない
とこの本のエキスを吸収できないだろう。
練習問題がないのもちょっと残念。
しかし、今回紹介している30冊ほどの本ではベスト5に入るか。
猪浦の評価:8点(10点満点中)
 

藤田英時『冠詞まるわかりブック』(NOVA ・2004年)
例によって a/the/無冠詞の3種類に分類して用法を説明しているが、
少しオ
ツムの弱い学習者を想定したためか、分類の基準がめちゃめちゃで、
結局丸
暗記学習法を冠詞の学習にあてはめた感じがする。
お勧めはしないが、どこか
憎めないところがある本で、
実力のある人が遊びで読むにはよいかも知れない。
猪浦の評価4点
(10点満点中) 
 

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